ロバストパラメータ設計(第一回)  
ロバストパラメータ設計の概要

タグチメソッドの1つである「ロバストパラメータ設計」について、いくつかの記事に分けて紹介しようと思います。
初回の本記事は、設計対象のとらえかた・感度・ロバスト性といった概念的な内容になります。

タグチメソッド

タグチメソッドとは、故田口玄一博士によって考案された各種技法群を指します。品質工学とも呼ばれ、1970~1990年代にかけて、実に半世紀を要して体系付けられました。
「ロバストパラメータ設計」はそのなかの代表的な技法です。タグチメソッドと聞くと、このロバストパラメータ設計をイメージする人が多いと思います。

ロバストパラメータ設計とは

ロバストパラメータ設計とは、設計対象のなかの調整可能なパラメータを適切なものに決定する設計技法です。

ここで、「適切」とは何かということを説明するために、最初に、ロバストパラメータ設計で前提となることについて説明をします。

ロバストパラメータ設計では、設計対象を次図のようなシステムとしてとらえます。

システム

入力・出力

設計対象であるシステムには「入力」が加わり、その結果として「出力」が現れます。
入力と出力には、図中の①にあるように、比例関係が成り立つものとします(細かいことを書くと、いくつかバリエーションがありますが、基本となる比例関係で話を進めます)。

このときの比例係数を「」と呼びます。

ノイズ

システムには入力の他にノイズが加わります。ノイズはシステムに対して、「入出力関係を乱す」作用を与えます。分かりやすく表現すると、「出力を比例直線から変動させる」という作用です。

同じ大きさのノイズが加わったとき、出力の変動しにくさは「ロバスト性」という言葉で呼ばれます。

ロバスト性

設計変数

上に書いたように、ロバストパラメータ設計は設計対象内のパラメータを調整する設計技法です。パラメータのことを以降「設計変数」と呼びます。

ここまでで、「感度」と「ロバスト性」というキーワードがでてきました。
ロバストパラメータ設計とは、こ
の2つを指標にして設計変数を調整する技法なのです。

2段階設計

感度とロバスト性という2つの指標をどのように調整するのか。ロバストパラメータ設計では、「2段階設計」と呼ばれる手順で行われます。
これは文字通り、2つの指標を個別に調整するというものです。通常は、次図のようにロバスト性を向上(ロバスト設計)させてから、感度を調整(感度設計)します。

2段階設計

ロバストパラメータ設計の手順

ロバストパラメータ設計の全体像を掴むために、作業フローを以下に示します。

フローは大きく分けて、①問題の定義、②実験、③設計の3つのブロックから構成されます。

ロバストパラメータ設計のフロー

①問題の定義

タグチメソッドに限ったことではありませんが、どのような数理設計においても最初に問題の定義が必要になります。
私は、この作業が数理設計のなかで最も重要であると思っています。
ここでは、上に書いたシステムの入力・出力や、設計変数の定義、そしてどのようにシステムを調整するのか(所望特性)といったことを定量的に定義します。

②実験

ロバストパラメータ設計では、設計変数を種々に変化させたサンプルを作成し、出力の数値を得るための実験を行います。
近年は、構造解析ソフトウェアなどのシミュレータが数々あり、実験ではなくシミュレーションで行う場合も多いです。
詳細は今後の記事で説明しますが、実験データを処理し「SN比」と「感度」を計算して、「要因効果図」と呼ばれるプロットを作ります。

③設計

実験によって得られた要因効果図から、所望特性を得るための適切な設計変数の値を探ります。
この作業が、設計者が最も頭を使います。ですが、基本を押さえておれば難しいものではありません。
最後に、設計した条件で確認実験を行い、結果の妥当性を検証します。

まとめ

本記事では、タグチメソッドの技法群の1つである「ロバストパラメータ設計」の概要について記しました。

システムとしてのとらえかた、入出力関係、感度・ロバスト性の考え方と、設計の手順について説明をしましたが、これでは具体的に何をしたら良く分からないかと思います。
次回以降では、デモ問題を設定し、実際にそれを解きながら説明をしていこうと思います。